ダイオキシン:水底の濃度基準設定へ 中環審

 中央環境審議会水環境部会の専門委員会は24日、河川や海などの水底の物質(底質)のダイオキシン濃度について、1グラム当たり150ピコグラム(ピコは1兆分の1)とする報告をまとめた。同日午後、大木浩環境相に答申し、環境省は8月中に告示する方針。底質のダイオキシンについては魚介類への影響が懸念されながら、これまで環境基準がなかった。環境省の00年度の調査で底質の汚染が各地で確認され、地元自治体から環境基準の設定を求める声が強かった。

 水中のダイオキシンの環境基準は、ダイオキシン類特別措置法に基づき、99年に1リットル当たり1ピコグラムと設定された。しかし、底質については、魚介類への濃縮や水中への溶出の関係を示すデータが少ないことなどから、基準作りが遅れていた。

 今回の基準は、底質のダイオキシンが水中に溶出した場合に、環境基準の1リットル当たり1ピコグラムを超えない値を計算で導き出した。計算には、間隙水(かんげきすい)(水底の泥に含まれる水)のダイオキシン濃度から濃度を計算する方法と、実際に汚染された泥を使って水質への影響を測定する方法を用いた。

 環境省の00年度のダイオキシン調査によると、全国の河川などの底質(1836地点)の平均値は1グラム当たり9・6ピコグラム。環境基準となる150ピコグラムを超えるのは14地点で、最もダイオキシン濃度が高かったのは富岩運河(富山県)の1400ピコグラム。神崎川(大阪市)510ピコグラム、田子の浦港(静岡県)470ピコグラム、樋ノ口川(島根県)460ピコグラムなどが続いた。

 すでにオランダやカナダでは底質のダイオキシン基準があり、汚染が確認された河川などがある自治体からは除去対策のため、早急に環境基準を設定するよう求める声が出ていた。

 環境基準が設定されると、高濃度の河川や海の底質について詳しく調査した上で、しゅんせつなどによるダイオキシン除去対策を講じることになる。 【足立旬子】

◆00年度の調査で平均値が1グラム当たり150ピコグラムを超えた地点

都府県 水域    平均値(ピコグラム)

東 京 横十間川     240

富 山 富岩運河    1400

山 梨 濁川       160

静 岡 田子の浦港    470

大 阪 木津川      450

    六軒家川     160

    神崎川(新三国橋)510

       (千船橋) 180

    大阪湾(神崎川河口中央)160

    尻無川      150

和歌山 和歌川      390

    有本川      420

島 根 樋ノ口川     460

福 岡 大牟田川     300

[2002年6月24日 毎日新聞紙面より]


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