植田和弘さんと羽賀育子さんに聞く

ごみをどうする(下)


ごみ処分場の建設が進まないなか、各地の焼却施設は広域化、大型化している。一方、リサイクルはようやく本格的な動きが出始めたところだ。深刻なごみ問題を解決するにはどうしたらいいのか、資源循環の観点から政策提言している植田和弘京都大学教授と、市民運動の立場で足元から
の改革を訴える羽賀育子さんに聞いた。(くらし編集部・伊藤景子、杉本裕明、科学部・安田朋起)

 ○京都大学教授・植田和弘さん 減量の数値目標明確に

ごみ処分場の建設が進まないなか、各地の焼却施設は広域化、大型化している。一方、リサイクルはようやく本格的な動きが出始めたところだ。深刻なごみ問題を解決するにはどうしたらいいのか、資源循環の観点から政策提言している植田和弘京都大学教授と、市民運動の立場で足元からの改革を訴える羽賀育子さんに聞いた。(くらし編集部・伊藤景子、杉本裕明、科学部・安田朋起)

 ○京都大学教授・植田和弘さん 減量の数値目標明確に

○市民団体代表・羽賀育子さん リサイクル偏重に注意

――ごみ政策は大きな転換点に来ているようです。

 「燃やして灰にして埋めるというごみ処理のやり方がもう限界に来ているのだと思います。狭くて人口密度の高い日本で、灰を埋める最終処分場がいくらもできるわけがない」

 ――どんな政策にすればいいのですか。

 「出たごみをどうするかと考えていても問題は解決しません。買い物に行けば、ごみになるものばかり。国がリーダーシップを取って、企業が作る物の量や種類を制限してほしい」

 ――発生抑制はそう簡単にいかない現実があります。便利なペットボトルは今後も世界中で増え続け、八年後には2倍以上になるとのデータもあります。

 「プラスチックの原料の石油自体が有限の資源。私たちが使い切って、未来の世代が困る世代間不公平が許されるのでしょうか」

 「ささいな努力でできることも多いんです。私は都の環境保全推進委員をしていますが、会合で出るコーヒーに一つ一つ、プラスチックケース入りのクリームがついていた。こんなことはやめようと提案したら、職員が喫茶室に聞いて、棚に眠っていたステンレス製のクリーム入れを見つけてきた。買い物に行った時、袋を断るなど、私たちにできることはたくさんある」

 ――現実のごみ処理は依然、焼却が主流です。ダイオキシン対策もあって、より高温で連続して燃やそうという方向にある。

 「燃焼についてはわかっていないことがまだ多い。高温でがんがん燃やせば、ダイオキシンは抑えられるかもしれないが、焼却炉に放り込む物がこれだけ複雑化しているのだから、どんな化学反応が起こるかわからないじゃないですか」

 ――燃やさないのなら、現在出てくるごみをどうすればいいですか。

 「現実的には、焼却はなくせない。そのまま埋め立てたのでは処分場はすぐ満杯になるし、マヨネーズの容器を洗剤や水で洗って、リサイクルに回すよりはきちんと管理された炉で焼く方が合理的かもしれない。ただし焼却は最小限にして、リユース(再使用)とリサイクルを進めていく」

 「注意したいのは、リサイクルは大量生産・消費の免罪符になる可能性があるということ。15年前、私は牛乳パックの回収運動に取り組みました。ところが、その運動が紙パックのはんらんを招き、びんを追いやる結果になったんです。リサイクルされるんだから、いくら作っても使ってもいいんだ、と。さらに、リサイクル自体、ものすごいエネルギーとお金がかかる行為です。リサイクルだけでは循環型社会はできないんですよ」

 ――今すぐ行政が取り組めることは。

 「ある物をリサイクルすればいくらのコストとエネルギーがかかるのか、といったすべての情報を公開すること。それからただちに住民が参加したごみ政策作りにとりかかること。私の住む東京都中野区は自前の焼却施設がなく、金もない。近く行政、市民、事業者が1つのテーブルにつく『廃棄物減量等推進審議会』を発足させます。ごみは重大な政治のテーマであると同時に、住民の日常の問題。知恵を出し合えば、道はきっと見えてきます」

<2000年11月2日朝日新聞紙面より>

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