ダイオキシン新規制クリアは1割
焼却炉、激減か 産廃焼却施設全国調査

全国の産業廃棄物焼却施設のなかで来年12月から厳しくなるダイオキシン排出規制に対応できているのは1割ほどしかないことが、朝日新聞の都道府県アンケートでわかった。来年12月からは基準に合わない焼却炉の操業が禁じられるため、炉が激減しそうだ。環境省は、産廃を家庭ごみ用の市町村の炉で燃やしても良いとの方針を打ち出したが、こちらも一部でダイオキシン対策が間に合わない可能性があることが同省の調査で分かっており、産廃、家庭ごみ共に炉がひっ迫する恐れが出てきた。

 30都府県がこの半年以内の調査結果として(1)焼却施設数(2)新基準対応済みの施設数、を回答した。3道県は昨年3月時点の調査結果だった。14県は「調査中」「把握していない」などと答えた。

 30都府県の2080施設のうち、対応済みは249施設しかなかった。神奈川、大阪、兵庫など対応が進んでいる府県でも25%前後。山梨が37施設中1施設(2・7%)、奈良が64施設中1施設(1・6%)など、10%未満が13県あった。

 新基準をクリアするための改造費用は数千万円から数億円かかり、中小零細が中心の産廃業界では資金の手当てがつかない業者が多い。

 また、焼却施設の大がかりな改造には環境アセス、施設計画の縦覧、関係者からの意見聴取などの手続きが必要だ。「手続きだけで大規模施設なら3、4年、小規模施設でも1年はかかる」(東京都産業廃棄物対策課)とされる。住民同意を許可条件にする県も多く、産廃業者にとって高いハードルになっている。

 現時点で都道府県との事前協議にも入っていない業者が来年12月に間に合わせるのは絶望的、との見方が多い。新たに許可申請の準備を進めているケースを加えても、操業を続けられるのは2〜3割、と都道府県担当者は予測している。

 産廃が処理し切れなくなる事態に備えて、環境省は5月、市町村の家庭ごみ焼却施設での産廃処理を検討するよう促した。しかし、同省の調べでは、頼みの自治体施設も2割はダイオキシン基準が未達成で、新設・改造が間に合わないケースが出ると予想されている。

 ダイオキシン規制
 97年の廃棄物処理法改正で、焼却施設の構造、維持管理基準が見直され、排ガス中のダイオキシン濃度基準が既存施設で規模に応じて大気1立方メートル中1〜10ナノグラム(ナノは10億分の1)と定められた。来年12月から適用。経過措置期間中のいまは80ナノグラム。新設炉は既に0・1〜5ナノグラムに規制されている。新基準では、800度以上の高温焼却、ダイオキシンの再合成を防ぐ急冷却装置、特殊な集じん装置、排ガス中の一酸化炭素の測定装置などが義務づけられている。


                                  <2001/7/7朝日新聞紙面より>

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