ダイオキシンに近い化学物質 体内蓄積30年前の40倍


 ダイオキシンに近い化学物質「臭素化ジフェニルエーテル」(PBDE)の人体汚染が進み、30年前に比べて40倍以上の濃度で蓄積していることが、国立環境研究所などの調査で分かった。毒性ははっきりしていないが、欧州連合(EU)は一部の種類について使用禁止を検討している。環境省は調査結果を重視し、汚染実態を継続的に調査する方針を決めた。

 PBDEは、毒性の強いダイオキシンと似た構造を持つ化合物で、200種類余りある。同研究所の森田昌敏・統括研究官らは、PBDEの精密分析に成功。70年に採取、凍結保存されていた人体の脂肪組織10検体と、00年に採取した同数の検体を比較した。70年の脂肪1グラム中に検出されたのは29ピコグラム(ピコは1兆分の1)だったが、00年の脂肪には、約44倍の1288ピコグラム含まれていた。

 また、東京湾の海底の泥を堆積(たいせき)年代ごとに採取して調べると、PBDEは80年前後から急速に増加、00年には70年の約3倍になっていた。

 PBDEの一部はプラスチックや建材、繊維などの難燃剤に利用され、焼却や埋め立てなどにより環境中に広がり、人体に取り込まれたとみられる。北欧などでは4年前、人体に高濃度に蓄積している実態が判明。EUは、臭素原子が五つ含まれる種類について体内に蓄積しやすいことから、5年後をめどに使用を禁止する方向だ。

 業界団体「日本難燃剤協会」によれば、国内需要量は90年に約1万2000トンの最高値を記録。以後00年までに計6万8000トンが使われたという。

 毒性については、カナダなどで甲状腺の働きを乱すなどの環境ホルモン作用を指摘する研究がある一方、否定する見解もある。世界保健機関(WHO)は、焼却などで通常の塩素系ダイオキシンに匹敵する毒性を持つ「臭素化ダイオキシン」が発生する危険性を指摘している。(03:08)
2002年7月14日(朝日新聞紙面より)

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